2008年9月18日木曜日

スペイン語とカタラン語

■この夏、三年ぶりにバルセロナを訪れたが、カタラン語(カタルニア語)の存在が圧倒的なものになっているのに驚いた。店の看板や道路の標識にいたるまですっかりカタラン語に統一されていた。カタラン語こそカタルニア自治州の言語であるというメッセージがひしひしと伝わってくる。

バスク語など独自の言語を公用語にしている自治州がほかにもある。とはいえ、これまで急進的な言語政策をとってきたのはカタルニア自治州で、近年は学校の授業ももっぱらカタラン語でおこなわれるほどである。

そうした政策に異を唱えるスペイン人はむろん少なくない。バルセロナで暮らすことになった者にとって、子供の教育が悩みの種であるとよく聞く。またスペイン人でありながら、スペイン語をろくすっぽ話せない若い世代が出てきたと嘆く人びともいる。

その傾向がさらにエスカレートし、他の自治州にも広がることを懸念した哲学者のフェルナンド・サバテールは、この夏、「共通語を守るための陳情書」を認(したた)め国会に提出した。そこでは、確かにカタラン語もバスク語もガリシア語も等しくスペインの公用語であるが、スペイン国民唯一の共通語はスペイン語(カスティリア語)であり、スペイン語話者の権利は、スペイン国内のいかなる地域においても侵されてはならないと述べ、そのことを憲法や法律で明確にするように求めている。

この陳情書にはペルーの著名な作家バルガス=リョサも署名している。そして署名を求められたけれど断ったと新聞のコラムで告白したのはスペインの人気作家ローサ・モンテーロ。四億人もの話者がいるスペイン語は少しも危機に瀕していないし、その巨大な存在に呑み込まれないための奮闘はわからぬわけでもない、というのは彼女の言い分。陳情書をめぐる熱い攻防は秋になっても続きそうだ。