2010年4月18日日曜日

■ANGELES MASTRETTA

■スペインの有力紙「エル・パイス」の電子版を読んでいたら、片隅にメキシコの女性作家アンヘレス・マストレッタのブログ「自由港」へのリンクが張ってあることに気づいた。アクセスしてみると、もう一年半ほどつづいているブログで、最近はほとんど毎日のように更新されている。

日付をさかのぼって見ていくと、文字だけのブログだが、画像に出くわすこともある。三月十三日付けのブログでは、実弟がデザインした鮮やかなオレンジ色のメキシコ製スポーツ車が映っている。日々取りあげられる話題はさまざまで、きのうはキューバの反体制作家(エリセオ・アルベルト)の本の紹介、その前は、「矯正のためには女を叩いていいんだ」と大まじめに語られていた中東のある国のテレビ番組の話(「そいつ頭をスコップでぶちのめしたくなったわ」)。

話があちこちに飛ぶのがブログというものの特性かもしれないが、マストレッタ自身「私はおしゃべりな人たちに囲まれて暮らしている。思い出やとりとめのない話に興じる楽しみを知らない人は、私の家族や友人たち、ブログ仲間を理解できないと思うわ」と書いている。

ところでアンヘレス・マストレッタの小説は残念ながら日本語にまだ翻訳されていないが、大ベストセラーになった出世作「命を燃やして」は映画化され、昨年日本でも公開された。暴力と狡猾さを手だてに権力の中枢にのし上がっていく男の、一見「控えめで古風な妻」の物語である。男尊女卑の社会でヒロインは、マッチョな男たちを注意深く観察して、賢くしたたかな女性へと変貌を遂げていくのである。

その注意深い視線の片鱗は「自由港」でも垣間見ることができる。「私がサッカーが好きかどうかって? 九〇分もひとりで見られるほど好きではないわ。だけどサッカーを見ている男どもを見るのは楽しいわね」