2007年2月12日月曜日

Diamantes y pedernales

■この短編集は、二年ほど前に訳した『アルゲダス短編集』の続編である。アルゲダスがその後半生に書いた短編のほぼ全作品をこの一冊に集めた。それらの物語の舞台は、たいがいペルーのアンデスだ。先住民のインディオたちと暮らした作者の少年時代の日々を描いているのである。 

表題作の「ダイヤモンドと火打ち石」はじつは、アルゲダスにとって十数年ぶりの小説であった。長いスランプを経て再び勢いを得たアルゲダスは、つぎつぎと力作を発表していく。そのいくつかを今回この短編集に収録することができた。なかでも、異形のダンサック(踊り手)の死と再生の舞を描いた「ラス・ニーティの最期」は圧巻だ。光と闇が交錯する空間での息も絶え絶えの舞は、自らの死を選ぶ晩年のアルゲダスの苦闘さえも予兆するかのようだ。
「東京新聞」2005-7-14